我らが隣人の宮部さん
     我らが隣人の宮部さん 

 『ブレイブ・ストーリー』
       特設ページ
          
角川書店の『ブレイブ・ストーリー』
刊行記念公式サイト(期間限定)

著者インタビュー
『小説現代』2003年5月号


  
表紙装画 いとう瞳 いとう瞳さんのHP
 別れ、失い、傷つくことは、これからも繰り返されてゆくだろう。何度運命を変えてそこから逃げだそうと、変えた運命のその先には、またその運命のなかの喪失や別離が待っている。
 喜びがある限り、悲しみがある。幸福がある限り、不幸もある。
『ブレイブ・ストーリー』下巻(角川書店)、614頁
『ブレイブ・ストーリー』等について

阿波っ子さんのコメント   03/03/22
 

 私と宮部作品との出会いは,我が家でとっていた地方新聞に「ブレイブ・ストーリー」の連載が始まったときからでした(確か2001年のはじめの頃だったと思います)。当時,私は宮部作品を全く読んだことがなく,直木賞作家という認識くらいしかなかったのですが,新聞の連載小説を読む習慣があったこともあり,とりあえず読んでいました。ところが,読み進むにつれてぐんぐんストーリーに引き込まれ,気がつくと毎朝の新聞が待ち遠しいという状態になっておりました。「ブレイブ・ストーリー」はファンタジーですが,子ども向けの娯楽的要素が強いだけの作品ではなく,作者のメッセージがそこに深く染み渡っていて,テレビゲームの経験もほとんどなく,決して若年層とはいえない私(宮部さんより5歳ぐらい年下)のような人間をも夢中にさせるものがありました。

 ところが,ストーリーの途中で突然連載が中止になり(32章のワタルまで),大変なショックを受け,思わず大極宮の宮部さん宛にどうなっているのかを質問したくらいでした。その後,すっかり宮部ワールドの虜になった私は,10ヶ月をかけて文庫本になっている宮部作品をすべて完読し,続いて半年をかけて,再び出版順に通読したというように完全にはまってしまったわけですが,宮部作品を知れば知るほど「ブレイブ・ストーリー」の続きを読みたい気持ちは膨らんでいきました。それだけに,「ブレイブ・ストーリー」の単行本がようやく出て,上下巻を手にしたときの感激は格別のものでした。

 連載中止の悲哀から1年半近くずっと待ち望んでいたストーリーの完結ですから,冒頭から噛みしめるようにじっくりと読みました。やはり素晴らしかったです。期待に違わぬラストで作品の訴えるメッセージはまさに宮部ワールドの極致。特にこの作品は架空の幻想世界を舞台にしていたためか,他の代表作よりもダイレクトにメッセージが伝わってきたように私には感じられました。

 とりわけ,大詰めに入ってから感動のラスト・シーンまでの盛り上がりは圧巻で,何度も目頭が熱くなりました。「色々な苦しみ,悲しみを乗り越えて(受け入れて)生きるところに人生の素晴らしさがある」という人生賛美に満ちたこの作品,本当に心に染みました。著者によると,この作品は子どもの読者を強く意識して書かれたもののようですが,人生の艱難辛苦を様々に経験している大人にこそ著者のメッセージが余すところなく伝わってくるように思いました。

 過去,現在を問わず,世界のどこかで絶えず幻界の混乱と同じようなことが起こっていますが,神ではない不完全な人が作る世の中だから,こういう状態にもなってしまうのでしょうね。しかし,ワタルが得た真理を多くの人が感じることができれば、忌まわしい出来事も少なくなるのではないでしょうか。そのためには,現実から目を背けることなく,絶望せずに,真正面から向き合うことが大切になるのだと思います。ワタルのように・・。

 「ブレイブ・ストーリー」が伝えるメッセージは,不安定な人間の社会に対して,神から送られたもののように感じられました。宮部さんは執筆中の御自身の姿を狐憑きとおっしゃることもあるようですが,本当は神のメッセージを伝える巫女様だったりするのではないのかなとも思いました。多くの方がこの作品に触れられることを期待しています。


にこさんのコメント  
03/04/26
 http://www001.upp.so-net.ne.jp/niko/index2.html
 「本の数珠つなぎ」 読書のHPで宮部みゆきのコーナーもあります

 ファンタジーにあまり慣れてないためか、「ブレイブ・ストーリー」を読了するのに1ヶ月近くかかりました。その間にイラクで戦争が始まってしまい、それが本の世界とだぶってしまいました。

 私は昔から何で戦争は無くならないのかずっと疑問でした。それが「ブレイブ・ストーリー」のおかげで少し分かった気がしました。「ブレイブ・ストーリー」で一番印象に残ったせりふは、これです。

 「すべてはあなたの内にある。」(下巻 p177)

 誰の心の中にも悪がある。人を憎んだり妬んだりする心がある。みんながワタルのように「すべてはあなたの内にある」というせりふを受け入れて生きていけば、戦争は無くなるかもしれません。作者はそんな思いとメッセージをこの物語のつぎのようなストーリーのなかに託して読者に伝えようとしているのかもしれません。

 以下、ネタバレにご注意下さい。

 ワタルは、嘆きの沼でヤコムに出会います。ヤコムは何とワタルの父親、三谷明に生き写しでした。ヤコムの「子どもだから何だというのだ!」というセリフには、読んでいて唖然としました。ワタルはあまりのショックに倒れていき、もう一人のワタルがヤコムを殺してしまいます。ワタルは、そのことを信じられずにこれは幻覚だと思い込みます。

 ワタルはミツルを追って皇都ソレブリアに向かいます。大きな門があって、その前に五つの文様があります。四つは喜怒哀楽の感情に対応していることが分かり、門は開きます。でも、文様はもう一つ残っていました。それがどんな感情を表しているのか分からないまま、ワタルは門の内側に入っていきます。そして、彼は運命の女神の声を聞きます。

 「さあ、乗り越えなさい!」(下巻 P568)

 ワタルはもう一人のワタルと闘い、やっと自分の中にも憎しみの感情があることに気が付きます。最後に一つ残った文様は憎しみの感情を表していたのでした。誰の心の中にも人を妬んだり憎んだりする心がある。それを忘れていると憎しみがどんどん大きくなって、自分ではコントロールできなくなってしまいます。ミツルはそうなってしまい、自分の憎しみを受け入れることが出来ませんでした。しかし、ワタルはミツルとは違っていました。

 ワタルは、自分と闘う相手の本質を見抜きます。もう一人のワタルとは、ワタル自身の憎しみの感情から生まれた自分の分身だとさとったワタルは、剣を構えて突進してくる分身を両手を広げて受け入れるのでした……。このワタルの姿に、作者の思いとメッセージが具体的な形をとって現されているに違いありません。


雫さんのコメント  03/05/23
 

 これまでに宮部さんの現代物はほとんど読了し、私は宮部さんの作品では短編集が好きだななんて思ってたのですが、今回久しぶりにブレイブストーリーを読んで大変感動し、私の中でのベスト作品になりましたので書き込ませてもらいます(最近の書き込みではこの作品ちょっと人気がないようなので、応援する意味でも・・・)。

 私も実はファンタジーが苦手で、ゲームも全くしませんし、私だけならこの作品も読まなかったかもしれませんが、小5の娘(ワタルと同学年で大のファンタジー好きで、ハリポタはもちろん、はてしない物語、ダレンにレイチェルにローワンと読みまくっている子)に我が宮部様(笑)のこどもも読めるらしいファンタジー作品を読ませてみたい、そして感想が聞いてみたいと思い購入しました。結果、娘も感動して、上記のどの作品よりよかったとの事、そしてお母さんも早く読んでみてと言われつつ4月は仕事が忙しく、やっとG.W.から読み始め、私も皆さんと同じく上巻途中までなかなか読み進められず、でもだんだんと物語世界に入り込んでいき、最近やっと読み終えたところなんです。本を読んで泣くということがほとんどなかった私ですが、下巻では何度か涙しました(あれほど夢中になった模倣犯でカズが亡くなっても、有馬さんが嘆いても涙しなかった私がです)。後で娘に聞いてみると、娘と同じ場面で泣いていたことがわかり、10歳と30?才を同時に感動させてしまう宮部さんってすごいなと思いました。

 もちろん、10歳と30?歳では物語の感じ取り方は違うでしょうし、娘はやはり幻界中のストーリーに心奪われたようですし、私はと言えば、幻界の様子や登場人物が現実世界を見事に反映し、デフォルメすることによってより鮮やかに現実世界を風刺しているように感じましたし、幻界というものすごい世界を作り上げた宮部さんの神業のような想像力にも感嘆しました。でもただの風刺に終わることなく、希望もあり、それは私にとって大きな励ましとなりました。以降ネタばれもありますので、未読の方はすみません。

 私と娘が共通で涙したところ、、、それはカッツさんの死の場面です。カッツっていう人は本当に信念が生きて歩いているといったような人物ですが、彼女は志半ばで惜しくも亡くなってしまうのです。でも彼女はワタルにしっかりと彼女の信念を手渡して亡くなっていったんですよね(後にワタルが心の中でカッツの声を聞き、勇気をもらいます)。人が亡くなっても、その人の生き方が他人の中で生き続ける、というまさに、人の子の生に限りはあれど、命は永遠なりだなと思いました。カッツはワタルに自分の志を託し、短くても太い自分の生き方に間違いはなかったと思いながら亡くなることができたのでは、と思いました。

 また、カッツとロンメル隊長との関係や、幻界の世界のいろんな対立関係に、どっちも自分の考えを譲れない、どっちが善でどっちが悪ということもないという世界観があり、深いなあと思いました。ワタルだけではなく、なんにでもすぐに白黒つけたがる私にも(笑)人生って、世界ってそんなに単純には割り切れないんだよって教えてくれているようでありました。

 全体的には作品を読んで、諦めないことの大切さと、まさしく人生は旅であるということを感じさせられました。生きていると、もう諦めてしまおうと思うことがありますよね。でも、諦めるってことは自分を捨てることなんだなと思いました。ワタルが諦めなかったから、幻界も救われたのだし・・・。でもそんなワタルを支えてくれたのは、仲間たち、本当に人生は生まれてから死ぬまでの長いながーい旅路なのだろうと思いました。いろんな人と出会い、いろんな経験をしていく、みんな旅人なんですね。

 自分も死にゆく時、いい旅をしたなって思いたいもんだと思いました。人生は何を成し遂げたかではなく、どういう道のりだったか、その旅路全部が大事なんだということも言ってるような気がして励ましをもらいました。ワタルが運命の塔に向かう途中で、今までの幻界での道程が水晶で表現されているところでそう感じました。ワタルは本当にいい旅をしましたね。また、ミツルの道程はどんなに無惨な様子だったろうかと、思うと胸が痛みます。彼には(まだ子どもだったので)生きていてほしかったのですが・・・。確かに彼のラストは謎が残っていて、娘とも意見が食い違いました・・・。亘は現世に戻っても辛いこともいろいろあるでしょうが、仲間に支えられて「乗り越えて」ゆくと思います。

 とにかく、私にとっては、励ましの言葉がいっぱいの、まさしくブレイブ(勇気の出る)ストーリーでした。まあ、親子共々宮部作品で感動し、語り合うことができてよかったです。そうそう、ミツルの最後については娘と意見が分かれましたよ。私は人柱になったんだねって言ったら、違うよ最後のところで死んだんだよ、自分と戦って死んだんだよって娘に言われました(クールやなあ)。私は、ミツルは確かにあの場面で死んだけど、最後のワタルの祈りで悔い改め、人柱としてロンメル隊長と次の1000年を見守っていく役割を与えられたんだと理解しました。それから、美鶴が現世で生きており、転校して行ったっていうことは、娘と二人共通の謎となっています。でも、まあいいかって感じですが。娘は、今度は火車が読んでみたいと言ってるんですが、それはちょっと・・・もうちょっとかわいいのをすすめたいです(笑)。

 以上本当に長くなりましたが、感動を誰かに伝えたくて熱く語ってしましました。


きっこさんのコメント  03/05/27
 

 私は、中学生の娘の友人から借りた「ブレイブ・ストーリー」を最近やっと読破いたしました。上巻一部の現世の話は面白いと感じたのですが、二部の幻界に入ってしばらくはかなりダルい印象を持ってしまいました。ファンタジーは「ハリーポッター」でハマり、決して嫌いなジャンルではないのですけどね。しかし、物語の結末はどうなるんだろうという気持ちが強かったので、最後まで頑張って読み続けました。結局、終盤は「次が気になって眠れない」という、宮部さんの本を読む時のいつもの興奮状態に陥り、一気に読んでしまいました。

 
その後、娘が引き継き読み始めましたが、彼女は「十二国記」「ハリポタ」などのファンタジーの大ファンだけに一部の現世の話より二部のヴィジョンの話の方が面白かったようで、下巻に入るとあっという間に読破してしまいました。読書している間、ずっと号泣しつづけており、か〜な〜り、感動しておりました。

 娘の一番の号泣シーンは、ワタルがキ・キーマやミーナと別れるところでした。それと、ワタルが現世に戻った後、キ・キーマとミーナがワタルのハンライダーのブレスレットを見て無事に戻った事を確信するも、寂しさのあまり泣きじゃくるところです。「ワタルは現世に帰らないでほしい!」って訴えてます(笑)。娘は最初から「現世になんか帰らない方がいい」と言うほど幻界での冒険にのめりこんでいましたから。

 ワタルが幻界から戻った後、亘自身の家庭問題については何も変わりませんでしたね。しかし、亘は両親の離婚という人生における大きな難問を自分で乗り越えなければならないのです。幼い子供にとって、自分には到底理解できない理由で親が出て行ってしまうというのはその後の人生を大きく左右するほどの大事件だと思います。でも、ワタルは幻界で経験した多くの苦しみや悲しみを乗り越える事で自分に自信を持つ事が出来ましたね。

 ワタルのお母さんも夢でワタルの活躍を見ることによって「この先どんな事も乗り越えられる」と確信します。もしかしたらミーナはワタルのお母さんで、実は二人一緒にずっと旅をしていたのかもしれないですね。ラスト、亘のお母さんの清々しい微笑が目に浮かぶようです。

 ところで、やまももさんが「幻界のミツルは現世の美鶴そのものではなく、亘が幻界に作り出した自らの分身の一人だったのではないでしょうか」と掲示板に書いておられますね。私も同じように考え、自分なりに納得しました。しかし、現世の美鶴については読む人それぞれの解釈が可能ですね。

 私は、現世の美鶴も亘の想像上の人物かもしれないと思う反面、逆に実在の少年であって、すごく不思議な魅力に溢れていて、亘はそんな美鶴に魅了されてしまい(ヘンな意味じゃないですよ)、ワタルの幻界のなかにも現れてしまったのではないかとも考えます。美鶴に惹かれると共に美鶴を救ってあげたいと。同じ意味で大松香織もそうなんじゃないかな?と思いだしました。そして二人は、ワタルの幻界を亘のお母さんと同じく夢で見ていて、ラスト、美鶴は新たな希望を胸にどこかよそへ旅立っていったのかも・・・



テハヌーさんのコメント  03/06/10
 http://www001.upp.so-net.ne.jp/niko/arupu/tehanuu.html
 「テハヌーさんの映画日記」ハリウッド映画からミニシアター系の映画まで

 
 「みんなの宮部みゆき論」が「我らが隣人の宮部さん」に名前が変わりましたが、ピッタリですね。素敵なネーミングです! お隣に住んでいる、優しくて面白いお姉さんみたい。お醤油の貸し借りなんかしたりして(笑)。でも意外な一面をたまにかいま見せる事があるかも……
 
 宮部さんの本は「ブレイブ・ストーリー」「ドリームバスター2」「あやし」と立て続けに読んでおりました。もちろん全部、面白かったですよ。「ブレイ・ブストーリー」に至っては、愛蔵版まで買ってしまいました。ええ、泣きっぱなしでしたとも(笑)。もう何でもないところでやたらと泣いてしまってたんですよ(キ・キーマがワタルに親切にしてくれる場面とか)。悲しい場面より、そんな温かい場面で胸が熱くなって涙していたように思います、私の場合は。宮部さんの小説は、彼女の心の温かさが、そのまま小説に乗り移って読者に慈しみの手をそっと当ててくれているようです。「ブレイブ・ストーリー」は児童小説のようなタイプでしたから、小さな子どもたちに向けて、その手はさらに一段と温かさを増していたように感じられました。

 でも例えば、あんなに優しいキ・キーマが老神教徒に対しては、差別的な言葉を使ってしまった時のように、人間のどうしようもない部分もちゃんと描かれていて、甘さだけではないシビアな宮部さんの目も感じます。亘の現実世界においての苦難については、もう言わずもがな、ですよね。

 宮部みゆきさんという女神がそうして織りあげたファンタジー冒険小説の世界が「ブレイブ・ストーリー」の世界なんですね。新聞連載時は亘くんの現実世界に胸を痛めつつ引き込まれて読んでましたが、本で改めて読むと、幻界世界の方にもすっかり馴染んで読んでしまいました。でもラストは、亘くんが現実に帰ってきてくれてホッとしました。幻界に行く前はどんな結果が待っているのかハラハラしましたが、ラストもとても納得できるものでした。状況を変えられたとしても自分が変わらないと、きっと何も変わらない。受け入れることが大切。言葉でわかっていても現実には中々できない事ですが、フィクションとはいえ、その鮮やかな成功例を1人の男の子の冒険譚として見せてくれた宮部さんにとても感謝したい気持ちです。
 
 あれ? 気が付くと「ブレイブ・ストーリー」の感想をやたら書いてますね、私。不思議。最初は書くつもりなんて、全然なかったのに。これが筆(キーボード)がすべって知らぬうちに…という奴でしょうか? いや、やまももさんから「感想を書いてね〜」という魔法をいつのまにかかけられてしまっていたのかも(笑)。


ようさんのコメント  03/06/25
 

 私は高1ですが、高校に入学して初めて宮部さんのファンの人を見つけてめちゃくちゃうれしい今日この頃です。「ブレイブ・ストーリー」もやっぱりおもしろいですねー。宮部さんの話は先が読めない!だから最後までドキドキさせられるんだと思います。「ドリームバスター」もほしいし、「あかんべえ」も読んでみたいし・・・。あえて言うなら宮部さんの本はすべてほしい・・・・・。あれっ、話があっちこっちに行ってるから、読む人は文脈をたどるのが大変だろうな!!

 そんな私が1週間かけてなんとか「ブレイブ・ストーリー」を読破することができましたので、心に浮かんだ様々な思いを文章にまとめてみることにしました。

◎宮部さんの作品には、だれもが持っている「優しさ」だとか「憎しみ」、「悲しさ」などがいろいろと書き表されていて、改めて全部の感情をひっくるめて一人の「自分」なんだなと思いました。

◎ワタルがこの幻界を旅して、強くなっていくのを見るのはすごくハラハラするけど楽しい!!

◎物語のラスト近くでオンバ様がワタルに女神を倒すようにそそのかしていましたが、そういう誘惑っていうのは、私たちの周りにも沢山あるなと思いました。宮部さんが「オンバ様」を登場させた理由は、もしかしたらもっともっと深いものがあるのかもしれませんが、人間はみんな「オンバ様」のような負なるものを持っている、ということが言いたかったのではないかと私は思いました。

◎最後の方は涙なしには読み進められませんでした。私は、基本的にあまり泣かないのに、もうボロボロと泣いてしまいました。一番最後に導師様がワタルに言った「真実はその心に残る」という言葉に思いっきり感動してしまいました。しかし、この感動を言葉に言い表すことができない(泣) きっと読んだことのある人には伝わるはず・・・(だといいな)。

 うーん、自分の感想をまとめているうちに力つきてしまいました(泣) なんとか文章らしくする努力をしてみたんですが、内容が行ったり来たりです・・・。文章がうまくなりたーい!!


いたるさんのコメント 03/07/01
 http://www.asahi-net.or.jp/~ia7y-mrs/
 「イタルの深夜勤務」  
 キングファンのページ。キング作品の感想や作品中の音楽紹介。オリジナル小説もあります


 
テレビゲームへのアンセム
 
 テレビゲームは、その古典である「ロード・ランナー」や「ウィザードリィ」が生まれてからすでに二十年以上の歳月がたとうとしているが、芸術表現の一分野としてはいまだに冷や飯を食わされ続けている。いや、それどころか、芸術分野として認識されているのかどうかも怪しいものだ。

 “ゲーマー”宮部氏は、そんな現状に腹を立て続け、今まで自分を楽しませてくれた数多のゲームたちへの愛を込め、アンセムとして「ブレイブ・ストーリー」を書いたのではないかと思うのである。そうでなければ「おためしのどうくつ」という章を設けたり、広い牧場を抱える農業と酪農の村に“マキーバ”なんて名前を付けるものか。

 ところで、不気味な「見捨てられた教会」のプロットでは、女性作家としては珍しくラブクラフトっぽさを感じるが、あれは「バイオハザード」か何かの雰囲気だろうか。

 
宮部みゆきとスティーヴン・キング

 宮部氏には、スティーヴン・キングにインスパイアされた作品がいくつか存在する。氏の弁によれば、「龍は眠る」は「デッド・ゾーン」に影響を受けているし、「燔祭」と「クロス・ファイア」はもちろん「ファイアスターター」のオマージュである。キングからの影響という視点で見た場合、「ブレイブ・ストーリー」が影響を受けているのは間違いなく「タリスマン」といえるであろう。

* 少年(三谷恒とジャック・ソーヤー)が母親のために幻界(「タリスマン」においては、“テリトリー”) へ
  と旅立つこと
* 幻界と現実世界に対になる人物が存在する場合があること(「タリスマン」においては、彼らを“ツイ
  ナー(Twiner)”と呼ぶ)
* また幻界に現実世界のテクノロジーを持ち込もうという悪人の企てがあったこと

 など、「ブレイブ・ストーリー」と「タリスマン」の共通点は多い。しかし、作品が探ろうとした深みやテーマ、そして完成度は「ブレイブ・ストーリー」に一日の長があるといえないだろうか。

 “スティーヴン・キングを超えた”という帯を巻いた本が、毎年何冊も書店に並ぶが、宮部みゆきの作品がそれらの中で抜きん出ているのは、氏がスティーヴン・キングから作品構成や着想だけではなく、「文学は人生の範であり、迷える心の灯である」という信念をくみとって(もしくは一にして)いるからであろう。

「作家が述べている真実とはただひとつのことであり、それはきわめて単純なことなのだ。魔法は存在する」
                                       (スティーヴン・キング「It」の献辞より)


作品名 あ行〜な行       作品名 は行〜わ行



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