日本の四季は、春は桜、夏は生い茂る緑、秋は紅葉、冬は一面の銀世界がイメージされますが、鹿児島の我が家では秋の季節が到来しても真っ赤に染まったモミジの紅葉を楽しむことはできません。これは我が家の庭だけのことではなく、近所のお庭でもそうなんですよ。 現在の拙宅が建ったのが1989年のことなのですが、その時に庭師さんにツツジ、ヤマモモ、サンゴジュ、ウバメガシ、クロガネモチ、ザクロ等に加えてモミジの植樹も頼みました。私の故郷では百人一首で有名な「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の、声聞くときぞ秋はかなしき」の歌そのままの光景を実際に目にし耳にしていたものですから、秋の風情を楽しむために雌鹿を慕う牡鹿の鳴き声までは望みませんが、庭にモミジは無くてはならないものと思い込んでいたのです。 ところが、依頼した庭師さんに「モミジの紅葉には秋の季節に入っての夜間の急激な冷え込みが必要なんですよ」と教えられ、「温暖な鹿児島市内の平地ではそれがないので紅葉は望めません」と言われました。 まあ、秋にモミジの紅葉を楽しめないのは残念ですが、我が家の庭でも秋の季節ならでは風景を楽しむことができます。家の前の道路に面して植えてある萩がフェンス越しに枝を伸ばして満開の花を咲かせ、家のベランダから下を見ると繁茂した柿の葉のなかに幾つか色づいた柿の実を見ることができます。キンモクセイの甘い香りが漂い、ガーリックパインが蔓を伸ばしてその先に無数の紫の花を咲かせ、ツワブキの黄色い花、白ツバキの白い花、サザンカの薄ピンクの花等を愛でることもできます。 |